Nature ハイライト
生命の起源:前生物的代謝回路
Nature 569, 7754
生命は、代謝によって食物が生体分子の構成要素に変換されることで維持される。本質的に、代謝には主要代謝物の分解と組み立ての両方が関わっており、全ての代謝反応は目的に合った一連の酵素によって促進される。生命の起源における重大な疑問は、「こうした反応ネットワークが生化学の助けを借りずに出現できたのかどうか」である。今回J Moranたちは、Fe(II)の存在下において、二酸化炭素(CO2)の還元生成物であるピルビン酸とグリオキシル酸から化学反応ネットワークが出現することを見いだしている。このネットワークは、その構成要素を分解してCO2に戻すだけでなく、生物代謝の主要部分であるクレブス回路と大きく重なり合っていた。今回の系は、ヒドロキシルアミンと金属鉄の存在下において、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸といったアミノ酸も生成する。まとめると今回の結果は、地球の原始大気の成分と考えられるCO2からどのようにして前生物的代謝経路が現れた可能性があるのかを示唆している。
2019年5月2日号の Nature ハイライト
核物理学:核の魔法
発生生物学:腸オルガノイドにおける対称性の破れ
免疫学:FATP2による多形核骨髄由来免疫抑制細胞の調節
分子進化学:適応免疫の進化
材料科学:高温で強いバルク金属ガラス
生命の起源:前生物的代謝回路
言語学:北方の有力集団
神経科学:「クラブドラッグ」で社会的臨界期が再開する
発生生物学:腸を復活させる
構造生物学:セロトニン輸送の仕組みの解明