Nature ハイライト
進化学:ホモ・ローデシエンシスの年代
Nature 580, 7803
1921年、北ローデシアのブロークンヒル(現在のザンビア・カブウェ)の鉱石採掘場でヒト族の頭蓋が出土した。レイモンド・ダートによってアウストラロピテクス・アフリカヌス(Australopithecus africanus)の化石が発見・記載されるまで、この標本はアフリカ全土で唯一の化石ヒト族のものであり、当初はホモ・ローデシエンシス(Homo rhodesiensis)のタイプ標本とされたが、その後は一般に別の古代ヒト族であるホモ・ハイデルベルゲンシス(H. heidelbergensis)に分類されるようになった。しかしその年代は議論の的になっており、50万年前と古いものからそれよりはるかに新しい年代まで、さまざまに提唱されてきた。この頭蓋の発掘場所は採掘し尽くされて当時の堆積物がすでに存在しないことから、堆積物に基づく年代推定が容易でなく、また、標本中の重金属濃度が高い(カブウェでは鉛と亜鉛の採掘が行われてきた)ために放射年代測定法の適用も極めて困難である。今回R Grünたちは、これらの問題を克服して、この頭蓋の年代が29万9000 ± 2万5000年前であると示している。この結果は、ホモ・サピエンス(H. sapiens)が出現し始めたのと同じ時代のアフリカに、複数の古代ヒト族が存在していたことを示唆している。
2020年4月16日号の Nature ハイライト
量子物理学:捕捉されたリュードベリイオン間の高速エンタングリングゲート
ナノスケールデバイス:より高い温度で動作するシリコン量子コンピューター
地球化学:地球マントルに保持されている集積時に受け継がれた始原的窒素の残滓
進化学:ホモ・ローデシエンシスの年代
神経変性:タウの拡散を制御する
免疫学:ヒストンメチルトランスフェラーゼSETBD1の炎症性腸疾患を防ぐ役割
免疫学:ZBP1による内因性Z-DNAの感知がRIPK3依存性のネクロトーシスや炎症を引き起こす
がん:髄芽腫の生殖細胞系列性の素因となるエロンゲーター複合体欠損
計算生物学:ヒトタンパク質のインタラクトーム
構造生物学:排出輸送体で結核菌に運び込む