Nature ハイライト
構造生物学:排出輸送体で結核菌に運び込む
Nature 580, 7803
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)による死者は、今でも毎年100万人を超える。結核菌の生存は、鉄やビタミンB12をはじめとする必須栄養素を宿主から取り込むことによっている。今回2つの論文によって、このような取り込みを行うタンパク質の構造と作用機構が明らかになった。D Slotboomたちは、ビタミンB12のような親水性化合物を取り込むABC輸送体であるRv1819cの構造を明らかにしている。この輸送体は、排出輸送体型の折りたたみが見られるにもかかわらず、親水性化合物の取り込みを行っている。一方、M Seegerたちは、シデロフォア(細菌が作る鉄キレート化合物)を取り込むIrtAB4の構造を明らかにしている。この輸送体も、排出輸送体型の折りたたみを持つ。IrtAB4には、膜の脂質二重層の内層付近に位置するシデロフォア結合ドメインがあり、その働きによって、結核菌はシデロフォアを還元して取り込むことができる。
2020年4月16日号の Nature ハイライト
量子物理学:捕捉されたリュードベリイオン間の高速エンタングリングゲート
ナノスケールデバイス:より高い温度で動作するシリコン量子コンピューター
地球化学:地球マントルに保持されている集積時に受け継がれた始原的窒素の残滓
進化学:ホモ・ローデシエンシスの年代
神経変性:タウの拡散を制御する
免疫学:ヒストンメチルトランスフェラーゼSETBD1の炎症性腸疾患を防ぐ役割
免疫学:ZBP1による内因性Z-DNAの感知がRIPK3依存性のネクロトーシスや炎症を引き起こす
がん:髄芽腫の生殖細胞系列性の素因となるエロンゲーター複合体欠損
計算生物学:ヒトタンパク質のインタラクトーム
構造生物学:排出輸送体で結核菌に運び込む