Nature ハイライト
分子生物学:トランスポゾンを抑え込む
Nature 582, 7811
トランスポゾンと呼ばれる転位性遺伝因子が能動的に転位すると、ゲノムの不安定性が引き起こされることがある。従って、このような過程は厳密に調節されなければならない。S Kennedyたちは今回、線虫の一種Caenorhabditis elegansにおいて、リボヌクレオチジルトランスフェラーゼであるRDE-3が、トランスポゾンRNAの3′末端に鋳型を用いずにポリ(UG)尾部を付加して、これをRNA干渉の標的とする仕組みを明らかにしている。この修飾によってRNA依存性RNAポリメラーゼが動員されることで遺伝子サイレンシングが起こり、このポリメラーゼは尾部が付いたRNAを鋳型として短鎖干渉RNA(siRNA)を合成する。線虫では、このようなsiRNAが標的mRNAへのポリ(UG)尾部の付加を誘導する。このサイレンシング・ループによって、生殖細胞系列での世代を超えたエピジェネティックな遺伝が説明できる。このループが、寄生性の可動遺伝因子や好ましくない可動遺伝因子から子孫を守る働きをしているのかもしれない。
2020年6月11日号の Nature ハイライト
物性物理学:相関グラフェンにおけるねじれ、スピン、バレー
物性物理学:魔法角グラフェンにおける相関相の母状態
地球科学:山岳の高さを制御する巨大逆断層のせん断力
システム生物学:ワクチンに対する感情のオンライン生態系のマッピング
遺伝学:東アジア人集団の糖尿病リスク
神経科学:視床下部を構築する
発生生物学:基底膜のリモデリングは胚発生に必要である
自己免疫:Notch3シグナル伝達は滑膜繊維芽細胞の病原性において極めて重要である
細胞生物学:心臓の肥大と過形成を制御するスイッチ
生物工学:ナノ液滴中で病原体を検出する
分子生物学:トランスポゾンを抑え込む
構造生物学:SARS-CoV-2のプロテアーゼの構造