Nature ハイライト

分子生物学:トランスポゾンを抑え込む

Nature 582, 7811

トランスポゾンと呼ばれる転位性遺伝因子が能動的に転位すると、ゲノムの不安定性が引き起こされることがある。従って、このような過程は厳密に調節されなければならない。S Kennedyたちは今回、線虫の一種Caenorhabditis elegansにおいて、リボヌクレオチジルトランスフェラーゼであるRDE-3が、トランスポゾンRNAの3′末端に鋳型を用いずにポリ(UG)尾部を付加して、これをRNA干渉の標的とする仕組みを明らかにしている。この修飾によってRNA依存性RNAポリメラーゼが動員されることで遺伝子サイレンシングが起こり、このポリメラーゼは尾部が付いたRNAを鋳型として短鎖干渉RNA(siRNA)を合成する。線虫では、このようなsiRNAが標的mRNAへのポリ(UG)尾部の付加を誘導する。このサイレンシング・ループによって、生殖細胞系列での世代を超えたエピジェネティックな遺伝が説明できる。このループが、寄生性の可動遺伝因子や好ましくない可動遺伝因子から子孫を守る働きをしているのかもしれない。

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