Nature ハイライト

Cover Story:ヒトのブラストイド:培養細胞が作る初期胚の統合モデル

Nature 591, 7851

ヒトの初期胚発生に関する我々の理解は、適切なモデルがないため妨げられている。今週号では2報の論文が、この問題に対して、ヒト胚盤胞(胚発生の最初の数日で生じる球形の細胞の塊)の培養細胞モデルという形で取り組んでいる。これら2つの研究チームの出発点は異なっており、一方の論文ではJ Wuたちがヒトの多能性幹細胞を用いているのに対し、もう一方の論文でJ Poloたちは再プログラム化中の成熟した繊維芽細胞を用いている。どちらのチームも、それぞれの細胞を培養皿で自己集合させて、胚盤胞に似た三次元構造を作ることができた。Wuたちが「ブラストイド(blastoid)」と名付け、Poloたちが「誘導ブラストイド(iBlastoid)」と名付けた構造は共に、初期ヒト胚の統合モデルに相当するが、いずれの著者たちも、今回の構造はヒト胚盤胞と同等ではないと指摘している。しかし彼らは、ブラストイドと誘導ブラストイドが不妊や妊娠喪失の研究に役立つことが示されるだろうと考えている。

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