Nature ハイライト
がん:フェロトーシスの新しい調節因子
Nature 593, 7860
フェロトーシスは過酸化脂質の蓄積によって引き起こされる細胞死の一形態であり、腫瘍抑制の重要な過程として注目されている。フェロトーシスを制御する機構には、GPX4が関わるものとFSP1が関わるものという2つの主要な機構があることが知られている。B Ganたちは今回、ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ(DHODH)もフェロトーシスの調節因子であることを明らかにしている。DHODHはミトコンドリア膜で作用して、ミトコンドリアの脂質過酸化を防ぐことで、フェロトーシスを抑制する。機構的には、DHODHはGPX4のバックアップ系として働き、ユビキノールの産生を介してフェロトーシスを抑制している。興味深いことに、これは報告されている他の部位とは異なり、ミトコンドリアでの脂質過酸化がフェロトーシスを誘導し得ることを初めて実証したものである。著者たちはまた、DHODHの薬理学的阻害はフェロトーシスを引き起こして、GPX4を低レベルで発現している腫瘍の増殖を抑制し、GPX4を高発現している腫瘍ではGPX4阻害剤と協働することを示している。
2021年5月27日号の Nature ハイライト
天文学:惑星環境下の水素–ヘリウム相の挙動のマッピング
複雑系科学:人はめったに遠くまで出掛けない
進化学:アスガルド類アーキアの新たなメタゲノム再構築ゲノム
神経科学:嗅覚系における、時間情報を用いたにおい源の識別
コロナウイルス:COVID-19の肺の地図
生理学:微生物がもたらす行動の変化
免疫学:健康と疾患における、組織をまたいだ繊維芽細胞の多様性
がん:フェロトーシスの新しい調節因子
細胞生物学:秩序正しく細胞を除去
幹細胞:脂質代謝と発生を結び付ける
構造生物学:ヒトガスダーミンDの高分解能クライオ電子顕微鏡構造