Nature ハイライト

Cover Story:腸内細菌:共生細菌は健全な免疫応答にかかわる

Nature 453, 7195

微生物学では、哺乳類に多数の共生細菌が定着する仕組みやその理由の解明が進められている。しかし、無害あるいは有害な細菌と「有益な」細菌を何によって区別したらよいのかは、ほとんどわかっていない。腸内細菌であるBacteroides fragilisは、哺乳類の免疫系に大きな影響を与え、また、この影響はたった1種類の分子、つまり莢膜のpolysaccharide A(PSA)に起因することが知られている。今回、B. fragilisのPSAが、インターロイキン10を産生するT細胞がかかわる過程で、大腸炎から動物を防御することが示された。このことから、B. fragilisは腸の炎症反応の抑制によってヒトの健康維持を助けていると考えられ、共生因子が新しい治療手段となる可能性が出てきた。表紙グラフィックは、腸内でPSA(黄色)が細菌(緑色)を取り囲み、T細胞が活性化されるのに先立って樹状細胞に取り込まれる様子を表している(Article p.620, N&V p.602)。この分野の研究は、国際ヒト常在菌叢ゲノムプロジェクトなどの、ヒトの微生物相の特徴を明らかにするための複数の大きな取り組みによって加速されつつある(Editorial p.563)。News Featureでは、A Mullardがさまざまな手法を検証し(p.578)、また、A Mandavilliが腸に細菌が定着していく様子を観察した珍しい例について報告している(p.581)。

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