Nature ハイライト
進化学:胚葉の年代記
Nature 519, 7542
胚葉説とは、体のあらゆる細胞や組織は、3つの基本的な層にグループ分けできるとする理論であり、この説が生まれたのは150年前の発生生物学分野の根源にまでさかのぼる。皮膚や多くの外部器官は外胚葉から、腸管は内胚葉から、筋肉や骨などの中間の器官は中胚葉から形成される。中胚葉は3つの胚葉のうち最後に進化したと見られており、I Yanaiたちは線虫の1種Caenorhabditis elegansの胚における遺伝子発現を研究して、それを確認した。だが、外胚葉と内胚葉はどちらが先に現れたのだろうか。明瞭な胚葉を持たない海綿動物Amphimedon queenslandicaをはじめとして、さまざまな動物についてさらなる研究が行われ、外胚葉よりも内胚葉の方が進化的に古い遺伝子を発現していることが分かった。著者たちは、最も原始的な動物は、後に内胚葉となる細胞からできており、外胚葉は摂食という原始的機能が失われた細胞として分化してきたのではないかと推測している。
2015年3月12日号の Nature ハイライト
実験進化学:大きな細胞集団の進化動態
細胞生物学:Notumタンパク質のカルボキシルエステラーゼ活性
免疫学:細菌による侵入ウイルス認識
宇宙物理学:巨大銀河の星形成率
惑星科学:エンセラダスにおける熱水活動の証拠
量子物理学:極低温における反強磁性秩序
進化学:胚葉の年代記
ゲノミクス:発達障害に関連する遺伝子
神経科学:脳の世界観
医学:自然リンパ球はエネルギー消費を増やして脂肪を減らす