Nature ハイライト
核物理学:中性子過剰核の内部
Nature 560, 7720
原子核は、自然界で最も複雑な量子力学系の1つである。電子散乱実験からは、原子核中の核子、つまり陽子と中性子の約20%は殻模型状態をとらず、相対運動量が大きく重心運動量が小さい短寿命相関核子対の状態にあることが示されている。こうした中性子–陽子対は、軽い原子核では直接研究されているが、より重い原子核ではまだあまり研究されていない。今回、CLASコラボレーションは、2004年に収集したデータに基づく、データマイニングイニシアチブの一環として再解析された実験的証拠を提示し、中重・重原子核では、中性子が過剰になるにつれ運動量の大きい陽子の割合が著しく増大するのに対して、運動量の大きい中性子の割合はわずかに減少することを示している。この結果は、核に中性子を加えても陽子の平均運動量に影響を及ばさないとする殻模型の枠組みでは説明できない。原子核中の運動量の大きい核子を探ることは、ニュートリノ振動測定や、中性子星などの中性子過剰系の研究に関連すると予想される。
2018年8月30日号の Nature ハイライト
基本定数:重力定数が真の値に近づく
神経科学:セロトニンの放出はマウスの社会性を高める
構造生物学:転写複合体の停止状態と活性化状態の構造
天文学:120億年前の星形成
核物理学:中性子過剰核の内部
地球物理学:地震の余震の位置を予測する
免疫学:結核の潜在期から活動性疾患期への移行の理解
細胞生物学:機械的合図の変換
構造生物学:Frizzled受容体の構造