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バイオメカニクス:効率的な筋肉が大型動物の長距離移動を可能にする

Nature 563, 7731

追跡用の首輪を装着したヌー。
追跡用の首輪を装着したヌー。 | 拡大する

Credit: Professor Alan Wilson

体重に対して補正すると、マウスの移動コストはウマの移動コストの20倍にもなる。陸上を長距離移動する動物に大型のものが多いのはそのためで、そうした長距離移動動物には他にも長い四肢や大きなストライド長といった省エネルギー装置が備わっている。では、個々の筋繊維レベルでは何が起こっているのか。マウスの筋繊維は、効率が約3分の1、つまりエネルギーの3分の1が運動へと変換され、残りの3分の2は熱として直接消費されることが知られている。生きた状態の筋繊維を直接調べることは小型の動物でも非常に困難であり、ウサギより大型の動物で試みられたことはない。今回A Wilsonたちは、移動性動物であるヌーの筋繊維を生きた状態で調べた(ヌーは、小さな個体でもマウスよりはるかに大きい)。その結果、ヌーの筋繊維がエネルギーの3分の2を仕事に変換し、熱として消えるのは3分の1にすぎないことが明らかになった。こうした効率の高さによって、ヌーは余剰な熱発生を最小にしながら移動コストを低く抑えることができる。これは、息を吐く回数が少なくて済むことを意味しており、従って息を吐くたびに失われてしまう水分量も少なくて済む。こうした理由により、ヌーは、日中の焼け付くような暑さの中を移動するにもかかわらず、3~4日に1回しか水を飲む必要がないのである。

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