Nature ハイライト
進化学:胚発生の細胞別トランスクリプトミクス
Nature 571, 7765
今回M Levineたちは、動物の胚発生に関する高分解能の単一細胞RNA塩基配列解読(scRNA-seq)解析の結果を報告している。研究対象はカタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)で、この動物を対象とすることには複数の利点がある。第一に、カタユウレイボヤの胚を構成する細胞は比較的少数なため、個体全体のscRNA-seq解析が行いやすい。第二に、ホヤの発生は個体差がなく確定しており、細胞の系譜がすでによく知られている。そして第三に、ホヤ類に代表される被嚢類は脊椎動物に最も近縁な現生動物であるため、脊椎動物の数々の新規性の進化に関して驚くほど多くのことが明らかになる可能性がある。今回の研究で得られたカタユウレイボヤの単一細胞トランスクリプトーム系譜からは、ホヤ類の胚発生に関して多くのことが明らかになり、脊索動物に見られる脊索などの構造や、脊椎動物に重要な終脳などの構造の起源について手掛かりがもたらされた。
2019年7月18日号の Nature ハイライト
計算化学:反応予測が容易に
進化学:胚発生の細胞別トランスクリプトミクス
遺伝学:単一細胞ジェノタイピング
神経科学:大脳皮質の符号化構造
生化学:脂質二重層の単層間で脂質が移動する仕組み
物性物理学:擬ギャップの温度を測る
工学:アリから着想を得たロボット
化学:自動的に進むナノリボン合成
気候科学:海面水温記録の問題を修正する
生化学:mRNAの液–液相分離能はm6Aによって増強される
構造生物学:ミトコンドリア内での分裂