Nature ハイライト
Cover Story:喫煙のシグナル:ニコチン嗜癖と糖尿病リスクの増大をつなぐニューロンのフィードバックループ
Nature 574, 7778
喫煙は2型糖尿病のリスクを劇的に高めるが、こうした効果の根底にある機序はまだよく分かっていない。今回P Kennyたちは、ラットでは、ニコチンによって活性化される脳内のニューロンと、膵臓による血糖調節を結び付けるシグナル伝達回路を、転写因子TCF7L2が媒介していることを明らかにしている。著者たちは、脳の内側手綱領域のニューロンに発現するニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)がニコチンによって活性化されると、膵臓によるグルカゴンとインスリンの放出だけでなく、ニコチンに対する有害な応答も生じることを示している。この結果、血糖レベルが上昇し、糖尿病の発症リスクが高まる。さらに、血糖レベルの上昇は、内側手綱領域のニューロンが発現するnAChRを抑制することによってフィードバックループを生み出し、喫煙に対する有害な応答を妨げるため、ニコチン嗜癖が強くなるのを助ける。TCF7L2は、シグナル伝達回路全体を変化させるので、ニコチン嗜癖と糖尿病リスクの増大とを結び付けている。
2019年10月17日号の Nature ハイライト
健康科学:世界の乳幼児死亡の不均衡
加齢:RESTと神経興奮は寿命に影響を及ぼす
量子物理学:超固体性を探る
大気科学:清浄な領域における大気中の新たな粒子の広範囲の形成
感染症:アフリカのマラリア媒介蚊は風に運ばれて移動する
進化遺伝学:平行進化の経路
神経科学:ニューロン膜電位の単一光子顕微鏡画像化
発生生物学:ヒトの脳発生は他の大型類人猿からどのように分岐したか
胚形成:カスパーゼ-8を介したネクロトーシス細胞死の調節
がんゲノミクス:SF3B1の変異が腫瘍発生を促進する仕組み