Nature ハイライト
進化遺伝学:平行進化の経路
Nature 574, 7778
収斂が自然界でこれほどよく見られるのはなぜだろうか。この現象の顕著な例の1つは、昆虫が、強力な植物毒素に対する耐性を進化させてきた機構である。例えば、強心配糖体という毒素は、通常はNa+/K+-ATPアーゼを標的とするが、昆虫綱の6つの目では、この酵素のアミノ酸置換を平行進化させることにより、このような毒素に対する耐性を獲得している。しかし2つの疑問が残っている。1つ目は、これらの繰り返し進化した4回のアミノ酸変異は耐性を付与するのに十分なのかどうか。2つ目は、これほど遠縁の昆虫に、これらの平行進化した変異が生じたのはなぜなのか、である。N Whitemanたちは今回、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)においてCRISPR–Cas9を用いて、オオカバマダラの系統で観察される変異経路の進化の順序で、この4つのアミノ酸置換のそれぞれをノックインして調べた。オオカバマダラは、これらの毒素に耐性があるだけではなく、その毒素を体内に蓄積して自己防御する種である。今回の結果は、収斂形質の教科書的な例の起源と機能的な遺伝学的基盤について最初の包括的な解析を示すことで、進化生物学の基本的な問題に関する手掛かりを示している。
2019年10月17日号の Nature ハイライト
健康科学:世界の乳幼児死亡の不均衡
加齢:RESTと神経興奮は寿命に影響を及ぼす
量子物理学:超固体性を探る
大気科学:清浄な領域における大気中の新たな粒子の広範囲の形成
感染症:アフリカのマラリア媒介蚊は風に運ばれて移動する
進化遺伝学:平行進化の経路
神経科学:ニューロン膜電位の単一光子顕微鏡画像化
発生生物学:ヒトの脳発生は他の大型類人猿からどのように分岐したか
胚形成:カスパーゼ-8を介したネクロトーシス細胞死の調節
がんゲノミクス:SF3B1の変異が腫瘍発生を促進する仕組み