Nature ハイライト
がんゲノミクス:SF3B1の変異が腫瘍発生を促進する仕組み
Nature 574, 7778
SF3B1は、がんで最も変異していることの多いRNAスプライシング因子である。今回R Bradleyたちが、その発がん作用の基盤となる機序の1つを明らかにしている。SF3B1の変異によってBRD9のスプライシングのパターンが変化して分解につながるため、BRD9が減少する。BRD9は、非カノニカルBAF複合体と呼ばれるクロマチンリモデリング複合体の成分で、これが失われるとゲノムの特定の座位で非カノニカルBAFの変化が起こり、それによって遺伝子の発現に異常が生じる。著者たちは、BRDが失われると黒色腫の発生が促進されることを明らかにした。BRD9のスプライシング異常を修正すると腫瘍増殖が抑制されるので、この結果はSF3B1変異を持つがんの新しい治療法につながる可能性がある。
2019年10月17日号の Nature ハイライト
健康科学:世界の乳幼児死亡の不均衡
加齢:RESTと神経興奮は寿命に影響を及ぼす
量子物理学:超固体性を探る
大気科学:清浄な領域における大気中の新たな粒子の広範囲の形成
感染症:アフリカのマラリア媒介蚊は風に運ばれて移動する
進化遺伝学:平行進化の経路
神経科学:ニューロン膜電位の単一光子顕微鏡画像化
発生生物学:ヒトの脳発生は他の大型類人猿からどのように分岐したか
胚形成:カスパーゼ-8を介したネクロトーシス細胞死の調節
がんゲノミクス:SF3B1の変異が腫瘍発生を促進する仕組み