Nature ハイライト
加齢:RESTと神経興奮は寿命に影響を及ぼす
Nature 574, 7778
ヒトの寿命を延ばすものは何か。B Yankner、J Zullo、D Drakeたちは今回、非常に長寿な人々の脳において、神経興奮の下方調節に関与すると考えられる転写シグネチャーを明らかにしている。転写抑制因子RESTが、これらの変化を仲介すると予測される。彼らは、線虫の一種Caenorhabditis elegansをモデルとして用い、神経興奮の抑制により実際に寿命が延長すること、そしてこの過程は、RESTや線虫オルソログの転写因子により仲介されていることを実証した。RESTオルソログの機能喪失変異は、神経興奮を上昇させ、長寿命のdaf-2変異個体の線虫の寿命を短縮したのに対し、RESTオルソログの過剰発現は、野生型線虫個体の寿命を延長した。同様に、脳でのREST遺伝子の条件的欠失は、加齢マウスにおいて大脳皮質の活動やニューロンの興奮性を上昇させた。RESTやその線虫オルソログおよび神経興奮低下はいずれも、長寿命に関連するフォークヘッド型転写因子FOXO1(哺乳類)とDAF-16(線虫)を活性化させる。従って、線虫からヒトに至るまで、神経興奮の状態は、RESTや関連転写因子により調節される老化過程の中心的モジュレーターである可能性がある。
2019年10月17日号の Nature ハイライト
健康科学:世界の乳幼児死亡の不均衡
加齢:RESTと神経興奮は寿命に影響を及ぼす
量子物理学:超固体性を探る
大気科学:清浄な領域における大気中の新たな粒子の広範囲の形成
感染症:アフリカのマラリア媒介蚊は風に運ばれて移動する
進化遺伝学:平行進化の経路
神経科学:ニューロン膜電位の単一光子顕微鏡画像化
発生生物学:ヒトの脳発生は他の大型類人猿からどのように分岐したか
胚形成:カスパーゼ-8を介したネクロトーシス細胞死の調節
がんゲノミクス:SF3B1の変異が腫瘍発生を促進する仕組み