Nature ハイライト
Cover Story:多様性の根源:トランスクリプトーム解析によって浮き彫りになった緑色植物の進化
Nature 574, 7780
表紙は、ダーウィンが『種の起源』の結びで、種間の複雑な相互作用を表す例えとして用いた「雑踏した堤」の一例である。ここに写っているのは、シダ類のアメリカシラネワラビ(Dryopteris intermedia)、コケ類のウマスギゴケ(Polytrichum commune)、シノブゴケ類の一種Thuidium delicatumの3種で、緑色植物の著しい多様性を構成する50万種近い植物のほんの一部である。今回「1000植物トランスクリプトームイニシアチブ(One Thousand Plant Transcriptomes Initiative)」のJ Leebens-MackとG Wongたちは、緑色植物門(緑藻類や陸上植物を含む)、灰色植物門、紅色植物門(紅藻類)からなる植物の多様性を網羅する、1124種の栄養組織のトランスクリプトームについて報告している。著者たちは、系統ゲノミクスの枠組みを構築し、これを用いて種間関係を推測し、緑色植物の歴史における多様化事象のタイミングの図示を行った。その結果、遺伝子ファミリーの大幅な拡大は緑色植物、陸上植物、維管束植物の起源に先立って起きていた一方で、全ゲノム重複は顕花植物とシダ類の進化を通して繰り返し起きていたと思われることが分かった。