Nature ハイライト
神経科学:食餌中の塩が認知機能に影響を及ぼす仕組み
Nature 574, 7780
今回、一連の動物実験により、塩の摂取と認知機能障害を結び付ける生物学的機構が調べられた。この過程には、脳低灌流による機構とタウ関連機構が関係することが示唆されているが、著者たちは、認知障害が脳低灌流ではなくタウ関連機構を介して起こることを示している。この経路は、リンパ球の免疫応答、インターロイキンの産生、一酸化窒素合成の減少、それに続く(ニトロシル化の減少による)カルパインの活性化、カルパインによるp35のp25への切断、サイクリン依存性キナーゼ5(CDK5)の活性化、CDK5によるタウのリン酸化を介して進行する。タウのヌルマウスあるいは抗タウ抗体を投与したマウスでは、脳低灌流や神経血管機能障害が持続するにもかかわらず、高塩分の食餌を摂取させても認知機能が維持された。これらの結果がヒトに拡張できるのであれば、過剰な塩の摂取を避けて血管の健康を維持することは、高齢期の認知機能低下の原因となる病態の防止に役立つ可能性がある。