Nature ハイライト

微生物学:マウスのアルコール性肝炎をバクテリオファージ療法で軽減する

Nature 575, 7783

腸内微生物相は、マウスでアルコール誘導性の肝損傷を助長することが知られている。B Schnablたちは今回、細胞溶解素を産生する腸球菌のEnterococcus faecalisが腸内微生物相中に存在することが、アルコール性肝炎患者の予後不良と相関することを見いだしている。細胞溶解素陽性の微生物相をマウスに移植すると、より重篤な肝疾患が引き起こされ、また、エタノールによって腸の浸透性が増加してE. faecalisが肝臓へと移動し、そこで細胞溶解素が肝細胞の死と炎症を増悪させることが分かった。著者らはさらに、細胞溶解素陽性E. faecalisを特異的に標的とするバクテリオファージを単離し、このバクテリオファージをマウスに投与するとアルコール誘導性肝炎が軽減されることを示している。これらの知見は、アルコール性肝炎の治療にファージ療法が有望である可能性を示しているが、このような治療的手法が安全かつ効果的であることを確認するためには、ヒトでの前向き臨床試験が必要である。

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