Nature ハイライト
神経変性:腸内環境がALS発症に関与する
Nature 582, 7810
C9ORF72は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関与する最もありふれた遺伝的バリアントであるが、浸透度が不完全なことから、環境要因が疾患リスクに関わっていると考えられている。K Egganたちは今回、C9orf72対立遺伝子を持つマウスを使った研究で、2つの異なる施設で飼育されたマウスの表現型(死亡率や運動障害など)が異なること、そしてこれが2つの施設のマウスの腸内微生物相の違いと相関することを見いだしている。微生物相の移植などの広範にわたる一連の実験から、免疫を刺激する細菌の量の減少がC9orf72変異マウスの早期死亡を防ぎ、その原因となる全身炎症や自己免疫を顕著に軽減させ、運動機能の改善につながることが明らかになった。今回のデータは、いくつかの細菌が関与している可能性を示唆しており、このためこれらの細菌の疾患表現型への相対的な関与や、特定の腸内細菌がこの不治の疾患の転帰を決定する機構を調べるためにはさらなる研究が必要となるだろう。
2020年6月4日号の Nature ハイライト
光物理学:光のトポロジカル流体
光物理学:共振器における自由電子と光子の効率の良い結合
生命の起源:DNAは生命誕生の前に存在したのか
地球科学:大陸の分裂時に濃集した深部炭素
心血管疾患:コレステロール関連疾患リスクの中心地域の世界的な変遷
進化学:アイスランドに残された旧人類の痕跡
再現性:データセットの解析法はいくらでもある
神経変性:腸内環境がALS発症に関与する
がん:1つのがん遺伝子上の複数の変異
微生物学:感染した赤血球上のマラリア原虫抗原に対して保護作用を持つ抗体
遺伝学:短いものへの配慮