Nature ハイライト
化学:過渡種との反応
Nature 586, 7828
ベンザインや環状アレンなどの過渡種は、新たな化学反応性を実現できる、潜在的に貴重だがつかの間の機会をもたらすため、非常に興味深い。しかし、こうした過渡性によって、反応性の制御は困難になる。今回N Gargたちは、不斉ニッケル触媒反応を用いることで、環状アレンを捕捉して立体制御を実現した。このニッケル錯体は、ひずんだ中間体の動的な速度論的分割を実行して、エナンチオ選択的に三環式ラクタム生成物を生じる。計算機研究の結果からは、最初に立体選択的オレフィン挿入を通した環状アレンエナンチオマーの速度論的区別が起こり、その結果生じる立体化学情報が喪失して、その後中間体であるπ-アリルニッケル錯体の非対称化を通して絶対立体化学の導入が起こる、という触媒機構が示唆された。今回の反応は特殊だが、示された概念はひずんだ環状分子の触媒的不斉反応をより広く開発する指針となるだろう。
2020年10月8日号の Nature ハイライト
天文学:若い原始星円盤における環状構造
物性物理学:量子力学的起源のインダクタンス
化学:過渡種との反応
生物地球化学:一酸化二窒素の収支:人為起源の排出の増加
人間行動:人々を不平等にさらすと富裕層への課税に対する支持が高まる
分子生物学:霊長類の介在ニューロンレパートリーに見られる新機軸
神経科学:新しい信号は視床下部で経路が決まる
神経発生:母体の微生物相は子の神経発生に影響を与える
がん:がんにおけるマイクロサテライト不安定性の巻き戻し
がん:内皮細胞はSLIT2–ROBOシグナル伝達を介して転移を促進する
構造生物学:構造から見たサリチル酸認識機構
構造生物学:分枝アミノ酸製造装置