Nature ハイライト 生態:生物多様性を増大させる寄生植物 2006年2月23日 Nature 439, 7079 寄生植物が生態系の生物多様性の大きな推進力となっていることがわかった。寄生植物と宿主との関係に関してはこれまでたくさんの研究が行われてきたが、生態系全体への影響はほとんど知られていない。 R Bardgettたちは、ヨーロッパや北米の草地でよくみられる、ゴマノハグサの一種である寄生植物Rhinanthus minorが、地上および地中の諸性質に与える影響に注目した。そして、土壤の肥沃度をさまざまに変えた混植草地実験ポットを作製し、そこに3段階の密度でこの寄生植物を植え付けてみた。その結果、R. minorが存在すると植物の多様性が大幅に増大して栄養の循環も大きく促進されることがわかった。これは、寄生植物によって繁殖力の強い草の成長が抑制されること、および地中での細菌対菌類の比が上昇することによっている。 今回のデータは、寄生植物の影響が、土壤の肥沃度や肥料の投入以上のものとなりうることを示している。世界には3000種を超える寄生植物が存在しており、Bardgettたちは生態系の動態を解明するには、寄生植物に関する知見を増やすことが重要だと考えている。 2006年2月23日号の Nature ハイライト 宇宙:3つになった冥王星の衛星 考古:もっと急速だった現生人類のヨーロッパ移住 量子情報:今、見ちゃいけない 生態:生物多様性を増大させる寄生植物 進化:脊椎動物の進化再訪 − ヒトに近いのはナメクジウオよりホヤ 海洋生物学:日本のウナギの産卵場所がわかった 目次へ戻る