進化史の通説では、我々ヒトを含む脊椎動物は、ホヤなどの被嚢動物よりもナメクジウオなどの頭索動物と類縁関係が近いとされてきた。しかし今回、遺伝学の手法を使って、この見方に異論が投げかけられた。 H Philippeたちは、遺伝子よりも外見を基にした従来の分類法に疑問を抱いていた。確かに、脊椎動物の体の構造は、比較的不定形のホヤ類よりも魚類に似たナメクジウオ類のほうに似ている。しかし近年、リボソームRNAなどの単一遺伝子や複数遺伝子群を基に描き出された系統樹から、そうではないと考えられるようになってきた。 この論議に決着をつけるため、Philippeたちは過去の研究を一歩進め、問題の被嚢動物、頭索動物、脊椎動物の3つの分類群に加えて、棘皮動物(ヒトデなど)も含めた14種で、146個の同じ遺伝子を調べた。被嚢動物には進化の遅い種と速い種があって、分類を誤る可能性もあるため、ほかに進化の遅い24種も含めた。規模を拡大したこの研究から、なんと脊椎動物が被嚢動物と1つの分類群に収まることが実証された。しかも、ナメクジウオ(頭索動物)は脊椎動物よりも棘皮動物に近いという結果が出た。 著者たちは、これらの遺伝学上の知見をつなぎ合わせて脊椎動物の進化のパズルを埋めるには、今度は化石のほうを見直す必要があると論じている。