Nature ハイライト 医学:抗マラリア薬生産を生物工学が後押し? 2006年4月13日 Nature 440, 7086 化学工学と生物工学の技術を用い、抗マラリア薬アルテミシニンの前駆体となる化合物を産生する酵母株が作られた。この進歩によって、有効性の高いアルテミシニンを効率よく安価に大量生産できるようになるかもしれない。 マラリアによる死者は毎年100万人を超えており、アルテミシニンは多剤耐性のマラリア原虫に感染した患者の治療の選択薬となっている。アルテミシニンは現在、クソニンジン(Artemisia annua)とよばれるキク科植物から抽出されているが、供給量が限られているため高価で、発展途上国の多くのマラリア患者の治療に使用することは現状では不可能である。 今回、J Keaslingたちはこの問題を解決する道を開いた。出芽酵母がもつ生合成経路に手を加え、クソニンジン由来の2個の遺伝子を導入することによって、アルテミシニンの前駆体であるアルテミシニック酸を大量生産できる酵母を作り出したのである。ほんの数段階の化学反応でこの前駆体をアルテミシニンに変換できることは既に知られており、Keaslingたちは、この方法を最適化しスケールアップすることさえできれば、アルテミシニン合成のコストを下げ、多くの患者の命を救うのに役立つだろうと期待している。 2006年4月13日号の Nature ハイライト 進化:ヒトのアフリカ起源に迫る新化石の発見 医学:抗マラリア薬生産を生物工学が後押し? 化学:発熱しない白色光 神経:活動中のシナプスを見る 生態:「予想外の」微生物同盟が見つかった 量子物理:落ち着かない気体 目次へ戻る