Nature ハイライト 物理:2つの近藤効果 2007年3月8日 Nature 446, 7132 電子の運動を厳密に制限するナノ構造体である半導体量子ドットは、1個または数個の電子の挙動を研究・操作するための有用なモデル系として登場した。最もよく研究されている現象の1つである「近藤効果」では、量子ドット中の孤立電子スピンが電極内に多数存在する電子と強く相互作用して、複雑な多粒子状態を引き起こす。これとは微妙に異なるが、観測がはるかに困難なのが「2チャンネル近藤効果」で、こちらでは2つの電極内の電子が量子ドット内の単一局在スピンとの相互作用を通して、互いにもつれ合った状態をとる。従来の近藤効果と異なり、この新しい効果は、フェルミ液体の電子挙動に関する従来の描像では説明できない。2チャンネル近藤効果が最初に予測されてから25年以上たった今、ようやくこの現象が量子ドットで観測された。この系は、微視的レベルで細かく制御でき、究極のオーダーメイド・半導体ナノ構造に向かう一歩となる。 2007年3月8日号の Nature ハイライト 創薬:苦い薬 遺伝:癌遺伝子の総ざらい 宇宙:輝かしくも遠い過去 宇宙:火星にあまねく広がる水 物理:2つの近藤効果 材料:シリコンの微小構造体 細胞:よりシンプルになった皮膚再生モデル 脳:場所の知覚 植物:表皮が植物のサイズを決める 目次へ戻る