Nature ハイライト 細胞:iPS細胞由来のマウス 2009年9月3日 Nature 461, 7260 2006年にiPS(誘導多能性幹)細胞が登場して以来、その特性は、模倣の対象である本物の胚性幹細胞を基準として評価されてきた。最近、iPS細胞から生存能力のある成体マウスを作出したことが続々と報告され、今週号にはそのうちの2つが掲載されている。こうしためざましい技術的成果によって、iPS細胞が実際に、すべての組織や器官の細胞を作り出す能力という点で胚性幹細胞に極めて近いことが示される。Zhaoたちは、四倍体胚補完法とよばれる技術を使っており、この方法では、四倍体胚に注入した多能性細胞からキメラマウスが作製され、その胚組織は注入細胞のみに由来する。またBolandたちは、マウス胚性繊維芽細胞の誘導性遺伝的再プログラム化によって作出されたiPS細胞だけに由来する、生殖能力のある成体マウスを作製した。こうしたマウスは、iPS細胞由来組織の基礎研究にも細胞置換治療への応用研究にも使える、新しい研究素材となるだろう。 2009年9月3日号の Nature ハイライト 複雑系:臨界点の手がかり 生化学:転移RNAをあるべき場所におく 宇宙:M31を取り巻く銀河のかけら 構造化学:デザイナーDNA結晶 細胞:iPS細胞由来のマウス 細胞:タンパク質を光で操作 細胞:がん形成を促進する抗酸化物質 考古:握斧がヨーロッパに到来した時期を見直す 目次へ戻る