in vitroおよび動物での実験では、抗酸化物質ががんの発生を抑制することを示唆する結果が得られているが、その効果を臨床的に示す決定的な証拠はほとんどない。ところが、ちょっと意外なことに、ある条件下では抗酸化物質が、がん細胞の生存と増殖促進を助ける場合があることが明らかになった。正常な上皮細胞は、その構造を保持する細胞外マトリックスから離脱すると死んでしまうが、乳がんの場合は、腫瘍形成能をもつ離脱細胞にERBB2などの発がん遺伝子が生存シグナルを送ることができる。Schaferたちは、細胞の離脱はやはり代謝障害を引き起こすが、ERBB2および抗酸化物質のどちらもが障害を救済できることを明らかにしている。これらは、脂肪酸酸化を介して細胞のエネルギーレベルを上げるように作用しているらしい。この知見は、マトリックス環境の変化の中で、がん細胞が自らの生存を促進するために利用していると思われる、これまで知られていなかった機序の存在を示している。