クロイツフェルト・ヤコブ病などの原因になる感染性病原体プリオンは、タンパク質だけでできている。あまつさえ、まったく同じタンパク質粒子が折りたたみ方によって異なった立体構造を取れば異なったプリオン株が生じることが、今回2つの報告によって明らかになった。ひとつめの報告でC-Y KingとR Diaz-Avalosは、酵母Saccharomyces cerevisiaeのSup35というタンパク質からプリオン増殖に必要な断片をとってこれを蛍光タンパク質で標識し、それぞれが特異的なプリオン株をもつ酵母細胞に導入した。次にこれらの断片を再び単離し、これを「種」として使って細胞外で、細菌由来のSup35から長い繊維をつくらせた。これらの繊維を未感染の酵母細胞へと導入したところ、前の酵母細胞で出会ったプリオン株が忠実に未感染酵母細胞へと伝達され、元の同じSup35断片から異なったプリオン株が生じることがはっきり示された。もう1つの報告ではJ S Weissmanたちが、さまざまな温度のもとで形成させた組換えSup35凝集物が、異なった立体構造を取ることを明らかにしている。これらの異なる粒子を酵母に感染させると、異なったプリオン株が生じた。「これら2つの研究は、プリオンの複製がタンパク質だけによって行われるという『タンパク質だけ(protein-only)仮説』の決定打といえる」とM F TuiteがNews and Viewsで述べている。