ラパマイシンという薬は癌の化学療法補助薬として有望かもしれない。この薬を併用することによって、一部の癌が標準的な抗癌剤に対する抵抗性を獲得するのを防げるという。S W Loweたちによれば、あるタイプのB細胞リンパ腫、すなわち、遺伝子MycとAktが原因で生じる抗体産生B細胞リンパ腫をもつマウスは、標準的な化学療法には抵抗性を示す。しかしこのマウスに化学療法の併用薬としてラパマイシンを投与すると、リンパ腫が抗癌剤感受性をもつようになる。ラパマイシンは、細胞の生存にかかわるとされているAktタンパク質が制御するシグナル伝達系のうちの1つを標的とする。しかし、Aktの発現やこのシグナル伝達系の活性化があらゆる癌に見られるわけではないので、この併用療法が有効なのはこれらが起こっている癌に限られるかもしれないとLoweたちは警告している。今回の結果はヒトの癌の薬剤耐性を消退させうる方法を示しており、癌の治療法を癌の遺伝的性質にあわせて調整することの重要さを強調するものだ。「今回の研究成果の臨床的意義は明らかだ。実際、ラパマイシンやその類似化合物と他の抗癌剤とを組み合わせた臨床試験がすでに行われている」とF McCormickはNews and Viewsで述べている。