Nature ハイライト 発生:巻貝の巻型を逆転させる 2009年12月10日 Nature 462, 7274 巻貝の貝殻には右巻と左巻があり、これらは鏡像を重ね合わすことができないキラルな関係にある。この巻型は単一遺伝子座により遺伝的に決定され、母性遺伝するが、これにかかわる遺伝子自体はまだ同定されていない。黒田玲子(東京大学およびJST ERATO-SORST)たちは今回、ヨーロッパモノアラガイ(Lymnaea stagnalis)で8細胞期胚の細胞に単純な操作を加えると、成体の巻型を逆転できることを見いだした。注目されるのは、細胞の配置変化によって、多くの動物種で左右非対称性にかかわる遺伝子nodalの発現が左右逆転したことである。さらに、巻型を決定する単一あるいは複数の遺伝子と、優性型の割球配置を生み出す第3卵割期のキラルな細胞骨格動態との間に、強い遺伝学的関連性があることも明らかになった。このような操作しやすい実験系が登場したことで、左右対称性の機構研究が行いやすくなるだろう。 2009年12月10日号の Nature ハイライト 地球:史上最大の洪水 宇宙:γ線バーストを加速する磁場 宇宙:スターバースト銀河からの宇宙線 材料:予想外の充填構造 進化:雌がおしゃれになる場合 発生:巻貝の巻型を逆転させる 生態:均衡状態にある環境酵素 植物:種子の調節RNAが温度変化に対応する 細胞:編集による変化 目次へ戻る