リーシュマニア症は寄生虫による病気で、世界でほぼ1,200万人が感染し、症状は重く死亡することもある。ヒトでは、単細胞生物であるリーシュマニア(Leishmania)を保有するスナバエに刺されると感染する。しかしリーシュマニア症の伝播については、まだよくわからないことが多い。たとえば、スナバエに1回刺されて発症するには、どのくらいの数の原虫が必要か、また感染を促すと考えられている謎の「毒性因子」の正体は何かなどが不明である。P A Batesたちはこの問題にとり組み、メキシコリーシュマニアLeishmania mexicanaと媒介宿主スナバエLutzomyia longipalpisとの相互作用について詳しく研究した。それによって、感染を起こす原虫の量、原虫送り込みの基盤となる吐き戻しによる機構、繊維状のプロテオホスホグリカン(fPPG)が感染に果たす新しい役割が明らかになった。fPPGは、ハエからヒトへと感染する際に原虫が分泌するゲルの成分の1つである。これらの結果をまとめると、原虫と宿主昆虫の関係やヒトにおけるリーシュマニア症の病理解明、また効果的なワクチンや薬剤の開発に大いに影響しそうである。