Nature ハイライト

地球:マントル最深部の事情

Nature 430, 6998

地球のマントル最深部、すなわち地表から2,900キロメートル下にある核−マントル境界の直上では、変わったことが起きているらしい。下部マントルの大部分を構成している鉱物であるケイ酸マグネシウム(MgSiO3)は、この領域ではペロブスカイトと呼ばれる鉱物の結晶構造をとると考えられている。しかし、この鉱物相だけでは、核−マントル境界の上部約200〜300キロメートルに存在する地震波速度の不連続などのさまざまな異常を説明することができない。このような異常は、より密度の高いケイ酸マグネシウムの「ポスト−ペロブスカイト」相がマントル最深部に存在することを示唆している。一方、実験的および理論的研究からはペロブスカイト相の安定性を確認することしかできていない。最近の研究により、下部マントルの不連続面に特徴的な圧力でポスト−ペロブスカイト相への転移が起きることが示唆され、この難問の解決につながるだろうと考えられている。 今週号の2つの報告はこれらの観測に対する第一原理による説明を与えている。一つめの報告では、飯高敏晃たちがペロブスカイト相とポスト−ペロブスカイト相の安定性に対する第一原理計算の結果を報告し、ポスト−ペロブスカイト相は90ギガパスカル以上の圧力でペロブスカイト相より安定となることを見出した。これは、不連続面のふるまいと一致する。 もう一つの報告では、A R Oganovと小野重明が実験とシミュレーションを用いて、やはり最深部マントルに特徴的な温度と圧力ではポスト−ペロブスカイト相への転移が起きることを明らかにした。

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