Nature ハイライト 材料:有機超伝導体 2010年3月4日 Nature 464, 7285 新しい高温超伝導体の発見が続いている。なかでも最新の注目すべき発見は鉄ヒ化物である。しかし、新たな有機超伝導体は、過去10年間発見されていない。今回、カリウムあるいはルビジウムをドープした単純な炭化水素分子の結晶で、最高18 Kの温度で超伝導が発見されたことが報告されている。この新しい超伝導化合物のベースとなっているのは、5つのベンゼン環が互いに辺を共有しているピセン(C22H14)という分子である。これは結晶化すると、分子が規則正しく並んだ固体となる。本来これは半導体材料なのだが、結晶格子へのアルカリ金属のインターカレーション(挿入)により、金属的挙動や超伝導が生じる。今回、カリウムをドープしたピセンで、18 KというTcが得られた。これは有機超伝導体にしては高い値であり、これ以上のTcが得られるのは、アルカリ金属をドープしたC60だけである。ピセンは、多数存在する縮合ベンゼン環系分子の1つであるため、これ以外の超伝導炭化水素も見つかるかもしれない。 2010年3月4日号の Nature ハイライト 物理:量子計算キット 遺伝:起源の古い遺伝的変異体 細胞:蚊が匂いを選び出す仕組み 宇宙:銀河を形作るもの 材料:有機超伝導体 微生物:スリムでけちな微生物 進化:初期の草食性シレサウルス 発生:Hox遺伝子は多様性のもと 医学:ミトコンドリアの反乱 目次へ戻る