強誘電強磁性体、つまりマルチフェロイック物質は、電界効果エレクトロニクスの低電力性および高速性と、電圧で制御される強磁性の持続性およびルーティング可能性を兼ね備えているため、技術的に大きな関心を集めている。しかし残念ながら、マルチフェロイック物質はまれにしか存在せず、見つかっているものも強誘電性や強磁性は、従来型の有用な強誘電体や強磁性体に比べて弱いことが多い。最近、マルチフェロイック物質を作り出せる新しい経路が予想された。つまり、理論的には、強誘電性でも強磁性性でもない磁気秩序絶縁体(このようなものは多数存在する)は、下地基板からの歪みによって強誘電性マルチフェロイクスへ変えることができるというのである。今回J H Leeたちは、この方法をEuTiO3を使った実験で実現した。単一の実験パラメーターである歪みによって、複数の秩序パラメーターを同時に制御できることが示され、有用なマルチフェロイック材料を作り出すという刺激的な可能性が開かれた。