Nature ハイライト 神経:神経活動の司令塔 2010年6月24日 Nature 465, 7301 個々の神経繊維の基部にある軸索起始部(AIS)はナトリウムチャネルが多数集まっていて、軸索に沿って伝播していく活動電位が発生する部位であり、神経興奮性を研究する神経科学者の大きな関心を集めている。神経信号の発生源であることから、ここが神経活動を調節する場であるのは理にかなっているように思われる。今回2つの論文により、AISが内因性の神経可塑性の発生源であることが確証された。M GrubbとJ Burroneは、培養海馬ニューロンで、電気活動が可逆的にAISの位置を変化させることを示した。その結果として生じる内因性の興奮性増加は、発達段階の神経の興奮性を微調整しており、この部位はてんかん治療の標的として有望であろうと著者たちは考えている。一方、久場博司(京都大学)たちは、鳥の音刺激が欠乏している聴覚ニューロンでAISのサイズが増大することを示している。この場合も内因性の興奮性が上昇し、これはおそらく聴覚経路の維持に寄与していると考えられる。このような神経可塑性は、一部の聴力損失の回復に有効かもしれない。 2010年6月24日号の Nature ハイライト 化学:新しいアミド合成方法 遺伝:偽遺伝子の役割 生化学:DNAポリメラーゼの構造 宇宙:ホットジュピターの重さを量る 物理:シリコン中の原子を操作する 海洋:海洋の硝酸塩は上昇する 生態:餌探しのパターン 神経:神経活動の司令塔 目次へ戻る