Nature ハイライト 進化:フェロモンで生じた隔たり 2010年7月22日 Nature 466, 7305 ヨーロッパアワノメイガ(Ostrinia nubilalis)は、性的コミュニケーションの遺伝学や、種分化に性的シグナルが果たす役割などの研究のモデル系となっている。その理由の1つは、アワノメイガが性フェロモンの異なる2つの品種からなることである。この2品種では、フェロモンである酢酸塩化合物のシス異性体とトランス異性体の比率が異なっていて、それが強固な生殖隔離に結びついており、これが種分化への第一歩になっている可能性がある。雌のフェロモン生産とそれに対する雄の応答行動の遺伝的制御は解明が難しいとされていたが、今回、フェロモンおよび品種の違いにかかわる遺伝子が1個同定された。フェロモンの生合成に不可欠な脂肪酸アシル還元酵素遺伝子に存在する差異によって、雌のフェロモン生産の表現型の違いと、それにより生じる品種特異的シグナルの説明がつく。この知見から、単一の酵素のコード領域への置換蓄積によって、生殖隔離に十分結びつくほどの差異がフェロモン混合物に生じることが明らかになった。 2010年7月22日号の Nature ハイライト 医学:新規の抗糖尿病薬 脳:やめるべき時を知る 宇宙:はるか遠くの宇宙の構造 宇宙:地球のものに似た、月のアパタイト 材料:グラフェンのリボンを作る 気候:炭素のシンクとしての湖沼 進化:フェロモンで生じた隔たり 細胞:長寿因子DAF-16d/f 目次へ戻る