Nature ハイライト

医学:病的フィブリノーゲンの構造

Nature 472, 7341

A群レンサ球菌(GAS)は広く見られる病原菌で、軽度の感染症と、レンサ球菌毒素ショック症候群のような死亡率の高い重篤な侵襲性疾患のどちらの原因にもなる。M1タンパク質はGASの主要な侵襲性菌株の重要な毒性因子で、血管漏出や組織傷害を引き起こすが、この病原性には、宿主フィブリノーゲンとの相互作用とそれによる好中球活性化が必要である。X線結晶解析によって、この過程の構造基盤が明らかになった。M1タンパク質が4個のフィブリノーゲン分子をまとめて特有の十字形構造を作らせ、これがフィブリン凝塊に似たM1–フィブリノーゲンのネットワーク構造の形成を支える。好中球の活性化にはこのネットワーク構造が必要である。M1がフィブリノーゲンと結合するには、コンホメーション変化を起こす必要があり、つまりM1のフィブリノーゲン結合部位は隠されていて、免疫監視を逃れていると考えられる。この研究は、M1–フィブリノーゲン複合体がレンサ球菌毒素ショック症候群の治療標的になる可能性を示している。

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