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再生医療:脊髄損傷後の神経軸索再生

Nature 475, 7355

頸部の脊髄に損傷を負った患者は人工呼吸器が必要な場合が多く、呼吸障害が主な死因の1つとなっている。呼吸機能の回復を困難にしている要因は2つある。第一の要因は、第四頸椎より上位に損傷が起こると、脳幹内の呼吸中枢から脊髄内の横隔運動核に至るインパルス伝導が遮断されることである。第二の要因は、成人では、損傷後に脊髄神経軸索がほとんど再生しないことである。今回J Silverたちは、脊髄損傷のラットモデルを用いて、損傷後の軸索再生を妨げているのが、細胞外マトリックス中の分子群の発現量増加であることを突き止めた。特定の細胞外成分のコンドロイチナーゼによる分解と、脊髄の損傷部分をまたぐような形での末梢神経自己移植を組み合わせるという方法で、軸索再生後の呼吸活動の相当の回復が実証された。この研究結果は、脊髄損傷の一部では、損傷後の軸索再生と横隔膜機能の回復が可能なことを示唆している。

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