Nature ハイライト

生化学:ビタミンB1生合成に関与する「自殺する酵素」

Nature 478, 7370

ビタミンB1(チアミン)は1世紀以上前に初めて発見されたビタミンだが、その生合成経路の詳細はまだ明らかになっていない。それはこの経路に複雑で新規な部分があるからである。酵母では、タンパク質THI4pがビタミンB1のチアゾールを含む部分の組み立てを触媒する。これはNAD、グリシンおよび硫化物を、アデニル化されたカルボキシチアゾールリン酸へ変換するなどの複雑な反応である。硫化物の供給源および硫化物がチアゾールに取り込まれる機構はわかっていない。Chatterjeeたちは今回、THI4pが触媒するチアミンチアゾール生合成過程を初めて完全に再構築したことについて報告している。THI4pの保存されたシステイン残基が硫黄の供給源となり、このことはTHI4pが実際は生合成経路の補助基質であることを意味している。THI4pは補助基質としての働きを一度しか果たせないので、THI4pは実際には複数回ターンオーバーする酵素ではなく、補因子もしくは「自殺する酵素」であるといえる。

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