Nature ハイライト

医用工学:麻痺した腕でも物がつかめる

Nature 485, 7398

機能的電気刺激(FES)は、脊髄損傷後の麻痺がある患者に、手の運動制御を一部取り戻させるのに使われてきている。この方式では、残された腕部分の動きや筋活動によって手の筋肉の電気的活性化を制御する。しかし、現在のFESシステムは、個々の患者に合わせてあらかじめプログラムした情報を用意する必要があるうえ、可能な把持動作が限られている。今回、皮質の運動制御シグナルを脳マシンインターフェースを介して直接筋に伝えることで麻痺を克服するという、有望な戦略が報告された。麻酔薬によって腕が一時的に麻痺したサルは、この補助装置を使って複数の筋を協調的に動かし、物をつかんで操作できるようになった。このシステムでは、運動皮質のニューロン群から記録されたデータを使って、同じ運動課題をする際に麻痺した筋にさせようとする活動を予測する。そして、特定された筋に付けた5個までの電極に通電することで事実上脊髄を迂回して、麻痺した筋の随意的制御が誘導された。この「神経プロテーゼ」をヒトに適用できれば、既存のFESシステムで可能な運動よりもずっと順応性が高く、器用な手の動きが可能になると期待される。

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