Nature ハイライト
生化学:強力な毒素の働き方
Nature 443, 7111
サチラーゼ細胞毒素は、1998 年にサウスオーストラリア州で志賀毒素産生性大腸菌(STEC)の強毒株から初めて単離され、それ以来、ほかのいくつかのSTEC 株で見いだされている。STEC は、生命を脅かす胃腸疾患を引き起こすこともあるヒト病原体である。サチラーゼ細胞毒素が培養細胞に対して極めて強い毒性を示す機序が、今回明らかにされた。この毒素は、細胞に必須な小胞体シャペロンタンパク質BiP を切断するのである。シャペロン機能の欠損は小胞体ストレス応答に影響を及ぼし、現在は細胞老化や、白内障、パーキンソン病、アルツハイマー病などの変性疾患と強く関係づけられているので、今回得られた知見は注目に値する。この毒素は特異的にBiP 機能を破壊できることから、これらの疾患の発病のメカニズムをin vitro でモデル化するための新たな細胞生物学的手段となる。
2006年10月5日号の Nature ハイライト
神経経済学:心を決めろ
生体工学:ひげの効用
宇宙:注目される新しい太陽系外惑星
生化学:強力な毒素の働き方
物理:太陽電子を壁打ちする
量子情報科学:異質なものを組み合せた テレポーテーション
地球物理学:地殻のある種の再循環
遺伝:ゲノム修復の達人
医学:1918 年に大流行したインフルエンザの研究
進化:変化のための時間