Nature ハイライト
細胞:iPSC株から得られる入り混じった遺伝学的情報
Nature 492, 7429
体細胞から人工多能性幹細胞(iPSC)を作製できることは、ヒトの発生や再生医療の研究に刺激的な可能性をもたらす。こうした応用には、個体に由来するクローン性細胞が、その個体の遺伝学的背景を維持していることが必要とされるので、再プログラム化された細胞には染色体コピー数多型(CNV)があるとする報告は、iPSCのトランスレーショナルな使用に重要な意味を持ってくる。今回、F Vaccarinoたちが、7人に由来する20のヒトiPSC株について、全ゲノム解析とトランスクリプトーム解析を行った結果を報告している。再プログラム化が、体細胞ゲノムに既存のCNVに加えてde novoのCNVを必ず増やすという訳ではないことがわかった。さらに、個人ごとにモザイクCNVパターンがあることも判明し、培養ヒト線維芽細胞から得られたこれまでの知見が確認された。この研究は、ヒト組織で低頻度CNVによって生じるゲノムモザイク現象を見つけ出して調べる手段としてiPSCが使用できることを示している。
2012年12月20日号の Nature ハイライト
遺伝:赤血球の生物学的特性の遺伝学
再生医学:マイクロRNAが心臓再生を促進
医学:脆弱X症候群でのシグナル伝達
宇宙:年齢を通して見た星団
光学:異常光透過の理解が深まる
地球:マントルの粘性異方性
遺伝:栽培化されたワタ植物の進化
脳:行動選択の神経回路
細胞:iPSC株から得られる入り混じった遺伝学的情報
発生:Tet酵素の雌性生殖細胞での役割