Nature ハイライト
構造生物学:細菌の微量栄養素輸送体
Nature 497, 7448
ATP結合カセット(ABC)輸送体は、ATPの結合と加水分解のエネルギーを使って、基質の細胞膜を通過する輸送を行っている。今回、2つの論文で、最近見つかったABC輸送体スーパーファミリーに属する2つの輸送体、つまり原核生物でビタミンと微量栄養素の輸送に関わるエネルギー共役因子(ECF)輸送体のX線結晶構造が報告された。どちらの分子も、乳酸菌Lactobacillus brevis由来の輸送体である。P Zhangたちは葉酸ECF輸送体の、Y Shiたちはヒドロキシメチルピリミジンに特異的と考えられているECF輸送体の構造をそれぞれ解明している。これらの構造から、ECF輸送体の輸送サイクルの説得力のある作用機構モデルが示された。ECF輸送体のSタンパク質成分は哺乳類には対応する相同体が存在せず、しかもこの分子は基質との結合親和性が非常に高い。このことから考えると、このタンパク質は待ち望まれている新しい抗生物質の標的になる可能性があり、詳しく調べる価値がありそうだ。
2013年5月9日号の Nature ハイライト
神経科学:口と顔の動きを制御する親時計
老化:視床下部による老化過程の制御
構造生物学:mTORキナーゼの構造
量子物理学:光子の量子もつれの実在性
物理:スカーミオンがフェルミ液体挙動の破綻を引き起こす
気候:海水準上昇におけるグリーンランドの役割を見直す
細胞:サイトカインが指示する幹細胞分化
細菌学:身元を隠す病原性細菌
細胞:死んだ細胞のシグナル伝達機能
構造生物学:細菌の微量栄養素輸送体