Nature ハイライト
医学:H7N9鳥インフルエンザウイルス分離株を調べる
Nature 499, 7459
H7N9鳥インフルエンザウイルスは、2013年2月に中国本土のヒト集団に出現した。WHOが記録した感染は、同年7月第1週目までに133例となり、43人が死亡した。今までのところ、ほとんどの症例が生きた鳥を扱う市場と関連付けられている。今回、2つの研究グループが、H7N9ウイルスの受容体への結合特性について報告している。2つのグループは共に、H7N9ウイルスはヒトのα-2,6結合型シアル酸受容体に結合できるが、鳥のα-2,3結合型シアル酸受容体の方に優先的に結合する性質が維持されていることを明らかにしている。この性質が、ヒト間での効率的な伝播に向かってウイルスがさらに進化するのを制限する一因となっているのかもしれない。S Gamblinたちは、受容体類似体と複合体を形成したH7ヘマグルチニンの結晶構造も解明し、ヒト受容体への結合特性が生じた仕組みと考えられるものを詳しく調べている。Y Shuたちは、肺組織でのウイルス感染パターンを調べた。ウイルスは、ヒトの気管および肺の外植片では下気道上皮細胞と肺胞II型上皮細胞に感染し、気管に比べて下気道の方でより効率よく複製できる。このことは、これまでに見られているヒトからヒトへの低い伝播効率に関わっている可能性がある。また、患者の一部では、H5N1感染の一部で見られたものに似た高サイトカイン血症(いわゆるサイトカイン・ストーム、サイトカインの異常な急増)が起こったことも明らかになった。この症状は、疾患の重症化の一因となる可能性がある。
2013年7月25日号の Nature ハイライト
物理:超流動フェルミ気体におけるソリトン
微生物学:培養されたことがない微生物のゲノミクス
構造生物学:2つのクラスBヒトGPCR受容体
地球化学:火星隕石の年代の食い違いを解決
材料科学:羽のように軽く壊れにくいプラスチック電子デバイス
進化:絶滅が危惧される大型類人猿の遺伝的全体像
細胞:肝芽の誘導で臓器再生へ一歩前進
医学:骨腫瘍の前駆細胞
医学:H7N9鳥インフルエンザウイルス分離株を調べる