Nature ハイライト
進化:雄の派手さと寿命のトレードオフ
Nature 502, 7469
動物の雄は雌を引きつけるために、例えばシカの枝角や鳥の飾り羽根、ヒトのスポーツカーのように、コストのかかる派手な装飾を誇示する場合が多い。しかし、こうした装飾が非常に有利に働くからといって、これらの形質がすぐに集団内に定着するかというと、そうではない。誇示する装飾形質の大きさや派手さには、常にある程度の遺伝的変動が存在する。これは通常、複数遺伝子が関与しているためか、あるいは雄の形質の派手さと雌の健康がトレードオフ関係にあるからだと説明されている。しかし今回、第三の説明として、繁殖と生存率の間にトレードオフ関係があるという、拍子抜けするほど簡単な説が提案された。ソアイヒツジでは、角の大きい雄の繁殖成功度が高いが、遺伝的変動がかなり大きく、多くの雄は角が極めて小さい。角の大きさに強く関係しているのは、RXFP2というたった1つの遺伝子である。今回の研究で、この遺伝子の1つの対立遺伝子によって雄の角は大きくなり、多くの雌を引きつけるが、別の対立遺伝子によって角は小さくなり、長命となることが明らかになった。また、これらの対立遺伝子のヘテロ接合体は角の大きさが中程度だが、長命で繁殖成功度も高くなる。
2013年10月2日号の Nature ハイライト
分子生物学:プロモーターを認識する
遺伝学:単一細胞Hi-C法によるゲノム解析
細胞:細胞のほぼ全部がiPS細胞になるという効率のよい変換法
物理:2倍の量子
材料科学:ナノ光学のための表面励起の観測
地球:南極棚氷の底面における融解
進化:雄の派手さと寿命のトレードオフ
生物物理:グルタミン酸輸送機構を詳しく調べる
生化学:ポリケチド生成の新しいルート