Nature ハイライト
構造生物学:Na+、K+の細胞膜勾配の構造基盤
Nature 502, 7470
Na+,K+-ATPアーゼはNa+/K+ポンプとも呼ばれ、全ての動物細胞の細胞膜で発現されている。このポンプは、ATP1分子の加水分解につき3個のナトリウムイオンを細胞から排出し、代わりに2個のカリウムイオンを細胞外液から取り込むことによって、細胞膜を挟んだNa+とK+の勾配を作り出す。金井隆太(東京大学)たちは、リン酸化中間体に先行する状態にある、ブタ腎臓由来Na+,K+-ATPアーゼのX線結晶構造を複数解明した。このATPアーゼはNa+に対する親和性がかなり低いにもかかわらず、K+とCa2+は輸送せず、Na+特異的ポンプとして機能する。その仕組みが、Na+結合部位の詳細から明らかとなった。結晶構造からはさらに、オリゴマイシンの作用機構も説明される。この抗生物質は、3個のNa+イオンを閉じ込めたリン酸化中間体状態を安定化することにより、ATPアーゼを阻害する。
2013年10月9日号の Nature ハイライト
気候:最初に気候変動の災難を被るのは熱帯である
古生物学:脊椎動物の「顔」の進化
細胞生物学:オートファジーと繊毛形成とのつながり
構造生物学:Na+、K+の細胞膜勾配の構造基盤
物理:量子系を測定して安定化する
物性物理学:準結晶をオーダーする
地球:地球表面で見られる地磁気変動の内幕
細胞:造血幹細胞の階層構造
微生物学:細菌性髄膜炎の病原体は宿主の体温を測る
遺伝:DNAメチル化とDNA複製をつなぐ