Nature ハイライト 考古:ヨーロッパ最古の現生人類の骨 2005年5月19日 Nature 435, 7040 チェコ共和国のムラデチで出土した人骨群が、ヨーロッパの現生人類として最古のものであることを実証する報告が寄せられた。この成果によって、発見以来続いてきたムラデチ人骨の年代に関する議論に決着がつくことになる。 ムラデチ遺跡は人類進化から見ても考古学の面から見ても大きな意味をもつ。最近になってヨーロッパ各地の他の初期人類の遺物について年代測定が進み、古いと思われていた人骨が実際にはもっと新しいことが明らかになっている(Nature430, 198-201; 2004参照)。したがって、ヨーロッパに現生人類がいつどのようにやってきたかを解明し、先住者だったネアンデルタール人とどんな交流があったのかを知るうえで、ムラデチ人骨群の年代測定は極めて重要である。 この化石群の年代を高精度に決定するために、周囲の土壌や動物遺骸化石の年代測定がこれまで何度か試みられてはいたが、すべて失敗に終わっていた。今回E M WildおよびM Teschler-Nicolaたちは、加速器質量分析法(AMS)による放射性炭素年代測定という技術を用いて、ムラデチの人骨が放射性炭素年代で約3万1千年前(年代値は未較正)のものであることを明らかにした。この値は、オーリニャック文化(初期現生人類に伴って出土する道具類や芸術品の様式)の特徴をもつ人工遺物が出土したヨーロッパの他の遺跡で得られた年代値と一致する。 2005年5月19日号の Nature ハイライト 地球:人工衛星が明らかにした浅発地震の力学 考古:ヨーロッパ最古の現生人類の骨 医学:精巣癌遺伝子の同定 宇宙:電波で捉える宇宙の謎の正体 物理:光格子時計で時間計測を新しい限界へ : 目次へ戻る