Nature ハイライト
Cover Story:耐性と闘うやつ:長く使われてきたβ-ラクタム系抗生物質の作用を助けるコウジカビ属真菌由来天然物
Nature 510, 7506
表紙は、真菌の一種Aspergillus versicolorの分生子柄や胞子で、ラクトフェノール・コットンブルーで染色されている。NDM-1やVIMなどのメタロ-β-ラクタマーゼを持つグラム陰性病原菌による感染は大きな公衆衛生問題となりつつあり、ペニシリン系、セファロスポリン系およびカルバペネム系の抗生物質の感染病治療への使用に対する脅威となっている。今回、G Wrightたちは、環境微生物由来天然物のDMSO溶解抽出物の大規模試料群に対して、NDM-1の天然物阻害剤のスクリーニングを行った。抽出物の1つでA. versicolor由来のものが特に強力な抗NDM-1活性を示し、これは、約50年前に葉のしおれに関連する天然物として発見されたアスペルギロマラスミンA(aspergillomarasmine A;AMA)であることが突き止められた。AMAは、NDM-1とVIM-2の両方に対して強力な阻害作用を迅速に発揮し、VIM型あるいはNDM型の耐性遺伝子を保持する病原菌に対してin vitroおよびin vivoで抗生物質の効力を十分に回復させることが分かった。AMAには毒性がなく、忍容性も良好であることから、抗生物質アジュバント(補佐剤)の実現が期待される。(Article p.503; N&V p.477)
2014年6月26日号の Nature ハイライト
核物理学:ゼロ知識による核安全保証
構造生物学:tRNAが選択を誤らないように指令するのは変則的な塩基対
構造生物学:モジュール型ポリケチド合成酵素の構造
物理学:ビッグGへの新しい道
ナノ材料:単層カーボンナノチューブの新しい作製法
気候科学:グリーンランド氷床の過去の崩壊
神経科学:学習へのプルキンエ細胞スパイクの関わり
幹細胞:成人糖尿病患者の体細胞を再プログラム化
がん:髄芽腫のゲノミクス/エピゲノミクス