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進化:進化的な指減少の機序

Nature 511, 7507

ウシの蹄。
ウシの蹄。 | 拡大する

Credit: iStockphoto/Thinkstock

四肢類の基本形である5本指の肢は、進化の過程で何度も、さまざまに変化してきたが、それは通常、指の漸進的減少によるものであった。今週号に掲載されている2編の論文では、哺乳類の指の減少の基盤となる発生上の変化が調べられている。J Lopez-Riosたちが研究したウシでは、第III指および第IV指が変形して蹄を形成する一方、第II指および第V指は痕跡化し、第I指は消失している。発生中の肢芽における前後軸の極性は、発生が進むに従って漸進的に消失することが明らかになった。ウシでは、肢発生のモルフォゲンであるソニックヘッジホッグ(SHH)の受容体をコードするPtch1遺伝子は上方制御が阻害されているが、これは手板の発生中に、進化の過程で変化してきたPtch1シス調節モジュールが段階的なSHHシグナル伝達にもはや反応しないからである。K Cooperたちは、異なる複数の哺乳類について調べ、指の減少の機序が系統によって異なることを明らかにしている。トビネズミとラクダでは、系統は離れているものの、共に細胞死による組織形成により指の減少が起こる。一方、ブタなどの別の生物では、指の減少はより早期の四肢パターン形成過程によって調整され、細胞死が増えることはない。総合するとこれらの知見は、有蹄哺乳類および齧歯類の肢進化機序の目覚ましい可塑性を実証する一方で、ある程度の進化的収斂が見られることも明らかにしている。

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