Nature ハイライト

視覚:細胞を光受容器に形質転換

Nature 433, 7027

最近発見された網膜の光受容器は、夜なのか昼なのかを脳に伝達する。だが、この光受容器に時を知らせるものは何なのだろうか。新たな2つの研究によって、これらの「神経節細胞光受容器」に光応答を起こさせる光感受性分子が明らかになった。メラノプシンとよばれる感光色素の働きが詳しく解明されたのである。 メラノプシンは、ほとんど神経節細胞光受容器だけにしか見られず、これまでは生物時計を初期状態に戻すのを助ける分子だと考えられていた。しかし、この説を裏付ける具体的な証拠は得られていなかった。 そこでD Bersonたちは、メラノプシンの作用を調べる一連の実験を行い、このタンパク質を腎臓細胞に導入すると、形質転換が起こって光受容器になることを明らかにした。そのうえ、これらの細胞が光に対して示す応答は、神経節細胞光受容器の光応答によく似ていた。この実験からBersonたちは、メラノプシンが概日リズムにかかわる目の細胞に作用する感光色素であると結論した。 メラノプシンが誘導する分子変化のカスケード反応については、R LucasやM Hankinsたちの論文でも詳しく論じられている。彼らは、哺乳類の神経細胞を、機能をもった光受容器細胞へと変換できることを明らかにした。これらの知見は、網膜変性が起こった場合に脳の細胞を選択的に刺激して、患者の視力の回復を助けるといったような、重要な臨床的応用につながる可能性がある。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度