Nature ハイライト

味覚:苦味の知覚に迫る味な研究

Nature 434, 7030

我々が食物の味をどう感じるかについて、口中の受容器が甘味を感じ取る仕組みの解明はすでに大きく進展している。今回、舌にある味細胞で苦味情報の伝達にかかわる膜タンパク質の役割が突き止められた。 T2Rという特殊な受容体群が苦味感受性に関係していることはすでに示唆されていたが、それらの役割については今までよくわかっていなかった。C ZukerたちはT2Rの働きを調べるために、T2R受容体をもたないマウスを遺伝子操作で作出した。これらのマウスは苦味物質に対する感受性を失い、こうした物質を忌避しなくなった。したがって、苦味の感知にはT2R受容体が必要であり、かつこの受容体だけで十分だということになる。しかも、甘味を感じる細胞にT2R受容体の1つを発現させたマウスは、実際、苦い液体を好むようになる。このマウスには、苦味物質が甘く感じられるのだろう。この研究成果は、特定の味細胞は、どのような受容体であれ、とにかく受容体が存在すれば、特定の味を感じ取れるという考え方を強調するものだ。

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